がんと免疫のお話し
Cancer and Immunity

分子標的薬とはなにか?

 一般的に薬物療法は、根治目的や進行の抑制、または症状を緩和するために行われます。がん細胞の増殖やがん細胞を攻撃する免疫細胞の働きには、特定のタンパク質が関与していることがわかっています。そのタンパク質を標的にすることで、がんの治療をするのが分子標的薬です。
分子標的薬には「低分子化合物」と「抗体薬」の2種類があります。
・低分子化合物
分子標的薬の中でも、有効成分である物質(化合物)が小さいものです。がん細胞を増殖させるタンパク質を標的にして細胞内に入り込んで結合し、増殖を促すシグナルを受け取らないよう阻害する作用があります。
-低分子化合物のひとつ、レンバチニブ
 レンバチニブは、低分子化合物の一種。腫瘍免疫調整に関与する受容体型チロシンキナーゼを選択的に阻害する作用を有する、新規結合型マルチキナーゼ阻害剤です。がん細胞の増殖に関与するVEGFのほか、FGF(線維芽細胞増殖因子)やPDFG(血小板由来増殖因子)を標的にします。これらの働きを阻害することにより、がん細胞が栄養を取り込む新生血管の形成を抑えたり、腫瘍の悪性化を防いだりします。手術不能な肝細胞がん、甲状腺がんに適応があります。
・抗体薬
特定のタンパク質を標的とするタンパク質を「抗体」と言いますが、抗体を用いた分子標的薬を抗体薬と言います。抗体薬の作用メカニズムはさまざまで、がん細胞に出現するタンパク質に結合して直接攻撃するタイプもあれば、がん細胞の周囲の環境に作用するタイプもあります。
-抗体薬のひとつ、ベバシズマブ
 ベバシズマブは、がん細胞の増殖に関与するVEGF(血管内皮細胞増殖因子)というタンパク質を標的にした分子標的薬で、抗体薬の一種です。VEGFの働きを阻害することにより、がん細胞が栄養を取り込む新しい血管(新生血管)の形成を抑える作用があります。肺がんや手術不能な大腸がん、卵巣がんなどに適応があります。
・コンパニオン診断薬とは
 薬が患者さんに効果があるかどうかを事前に調べることを「コンパニオン診断」と言います。コンパニオン診断のための薬が、コンパニオン診断薬です。特にがん治療で分子標的薬を用いる場合には、重要な意味があります。がんは遺伝子の異常により発症する病気ですが、その異常には数多くのパターンがあります。コンパニオン診断は遺伝子診断とも言え、特定の分子標的薬とがん遺伝子の組合せに効果があるかどうかを調べられます。コンパニオン診断薬そのものは治療薬ではありませんが、分子標的薬の効果の有無を見極めることで、効果が期待できない患者さんが無駄な治療を受けなくてすむようになります。

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