がんと免疫のお話し
Cancer and Immunity

リンパ球

 ひとつの細胞が元になって、いろいろな機能や形をもつ細胞が作られていくことを「細胞の分化」といいますが、骨髄の1種類の細胞から、好中球、マクロファージ、単球、そしてリンパ球など、いろいろな免疫細胞が細胞分化によって作られます。
 リンパ球は、直径10~15ミクロン(1ミクロンは1mmの1/1000)の小さな細胞で、血液1mlにおおよそ150万個程度含まれます。その約3分の2がTリンパ球、3分の1がBリンパ球という種類のリンパ球です。血液の他に、脾臓やリンパ節に大量に存在しています。リンパ球には「特異的な認識」をする能力があります。リンパ球はもともと自分の体にあるものは認識しません。逆に、自分の体に元々ないものに接触すると、それがなんであれ、認識して反応します。自分のからだにないものとは、体に侵入してきた病原体などの異物や、自分の体の中に生じた異常な細胞です。これらの一つ一つを特異的に認識する際、リンパ球1個1個が、異物の一つ一つと1対1の関係で結合することになります。このようにあらゆる異物の一つ一つを個別に認識するという能力を持っているのは、免疫細胞の中でもリンパ球だけです。
 リンパ球が認識する相手の異物に出会うと、その異物を認識したリンパ球だけが数を莫大に増やして、その異物に対する防御力を強めようとします。つまり、その異物に接したことによって、それまでなかったその異物に対する反応性を「獲得」したように一見見えます。そういう意味で、こういうリンパ球の関係する免疫反応を「獲得免疫」と呼んでいます。また、リンパ球に認識されて、反応を起こさせるものを「抗原」と呼びます。リンパ球を持っていて、獲得免疫のタイプの免疫反応を行うのは脊椎動物だけです。それより原始的な、たとえばエビのような甲殻類や昆虫などはリンパ球を持っておらず、免疫系の中心は食細胞になります。

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