がんと免疫のお話し
Cancer and Immunity

がんとは?

■ がんとは?
人間の身体は多くの細胞から構成されており、その数は数十兆個にも上ります。人体を構成する細胞は、正常な状態であれば細胞数をほぼ一定に保つために分裂や増殖、自然死をコントロールする機能が働いています。

しかし、正常な細胞の遺伝子が何らかの原因で傷つくと、その機能が働かなくなってがん細胞へと変化。コントロールを失ったがん細胞がどんどん増殖してかたまりとなり、正常な組織を浸潤※していく状態が、いわゆる「悪性腫瘍」、病気としての「がん」です。
※浸潤…少しずつ侵食すること

・ がん発生のメカニズム
がんが発生するメカニズムには諸説あります。現在では、遺伝子に生じた何らかの変化が関与しているという説が有力です。遺伝子に変化をもたらす原因としては環境因子、つまり生活環境に存在する化学物質などの外的因子、食生活やアルコールまたは喫煙などの生活習慣、ストレスといった心理的因子が指摘されています。

人間の身体を構成している細胞は分裂と増殖、そして自然死を繰り返しています。正常な状態では、こうした働きは身体が新しい細胞を必要とする場合に限って機能するようにコントロールされています。要するに、細胞が老化したり欠けたりしたときに新しい細胞がそれに置き換わるというわけです。

・遺伝子の変化によって細胞がかん化する
特定の遺伝子に変化が生じると、細胞の機能に乱れが起きます。遺伝子の変化は身体の中で常に起こっており、実は数千個単位のがん細胞が毎日のように発生しています。健康な人間の場合は、そのがん細胞が増殖するのを免疫によって抑制しています。つまり、変化した遺伝子が体内に存在するからといって必ずしもがんを発病するわけではありません。

しかし、免疫力が低下すると、身体が必要としていない場合でも細胞が分裂して増殖し、自然死しなくなります。この死なない細胞が増殖した結果が病気としてのがんです。

・ がんの分類
がんは、発生組織の形態によっていくつかに分類されます。
まずは臓器の表面を覆う上皮細胞に発生するがんと、組織の構造を支える間質細胞などに由来するがんに大別されます。

代表的なものでいえば、前者は胃がんや大腸がんなど、後者は骨肉腫やリンパ腫などがあげられます。さらに、発生組織の細胞の種類によって腺がん、扁平上皮がんなどに分類されます。

 ー 腺がんとスキルスについて
腺がんは消化管の粘膜上皮細胞や分泌腺などに発生することが多いがんです。胃がんや大腸がん、乳がんなどがそれにあたります。

腺がんのなかでも悪性度が高く、硬い線維構造からなるがんが「スキルス」です。胃がんでいえば、スキルスは粘膜表面に発生する通常の胃がんとは違って胃壁の内部を這うように広がっていきます。そのため発見することが難しく、発見されたときにはすでに進行がんになっていることが多いため、スキルスは悪性度が高いといわれています。

 ー 扁平上皮がんやその他のがん
扁平上皮がんは口腔や食道など、身体の外部と近い臓器の表面細胞に多く発生します。また、造血細胞のがんには白血病やリンパ腫、骨髄腫などがあります。

一般の人はがんを臓器別に考えることが多いかもしれませんが、医学的にはがんを性質で分類するのが一般的です。
※腺(せん)…分泌や排泄をする器官
※扁平上皮(へんぺいじょうひ)…体表面の皮膚や内部が空洞になっている器官の内側の粘膜など

・ 納得できる治療法を選ぶ
がんと診断され、医師から告知を受けた瞬間はショックで頭が真っ白になるのは誰しも同じです。医師の説明がまったく頭に入らなかったということもあるでしょう。

当たり前のことですが、がん患者さんやそのご家族にはそれぞれの社会的背景があります。年齢や性別はもちろん、働き盛りの人や子育て中の人、家族の介護をしている人などさまざまです。社会的背景によって身体機能の温存を第一に考えたり、負担の少ない治療を選んだりと、どんな治療を望むかは患者さん一人ひとり違います。
・ 医師と相談しながら治療法を決めていく
がんという病気の特徴のひとつは「個別性」です。病名としては同じがんでも、どんな性質のがんなのか、早期なのか進行しているのか、さらにがんのサイズや転移の状態によっても大きく異なります。がんの特徴は専門家である医師に診てもらわなければ正確には掴めません。

多くのがん患者さんは、自分のがんに関する情報をインターネットや本などから収集し、とてもよく勉強されています。しかし、多くの患者さんは医学の素人です。集められる情報はごく一般的な知識に限られるでしょう。中には、誤りとまではいきませんが、偏った知識をもとにしているものも少なくありません。

そのため、とにかく専門家である医師と徹底的に話し合って、自分のがんを知ってください。相談のなかで、治療にあたって自分が大切にしたいこと、そういった希望や考えを伝え、もっとも良いと思われる治療法、患者さん自身が納得できる治療法を選びましょう。

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